【アウェーレポート】無念のドロー。3試合ぶりの得点で追いつき、一時逆転も、守備の乱れで2-2とされる(8月16日 レノファ山口)

 勝利とゴールが欲しい。ベガルタ仙台は7月から苦しい時期を過ごしている。明治安田J2リーグ戦が後半に入ってからなかなか得点がなく、直近のリーグ戦2試合も無得点。前節はホームで徳島に手痛い敗戦を喫しており、続く山口戦ではアウェーながらなんとしても勝利したいところだった。そして、勝つためにはゴールが必要だ。
 前節の敗戦という結果は受け止めたうえで、森山佳郎監督は試合内容をデータ等から分析し、改善されているところを確認し、次の試合に向けた練習を進めてきた。「悪い戦いをしているわけではないので、ここで変にぶれたり、やり方を変えたり、元気をなくしたりするのではなく、さらにアグレッシブに戦ってなんとか勝利をつかんで乗ってくれれば」。昨シーズンの同時期と比較して、守備面での良さはそのままに、現在のメンバーでのペナルティーエリア進入回数等の攻撃面でのデータが向上しているところは、じっくり攻撃力向上に取り組んできた成果。あとは、それを決めなければならない。
 今節の相手である山口は第13節で対戦したときとは監督が代わり、以前よりも前に人数をかけて攻撃をしてくる。このような相手とアウェーで対戦すれば押される時間が長くなることも覚悟しなければならないが、逆に相手の背後のスペースを突くことができれば、相手ゴール前で数的優位に立てる。宮崎鴻は徳島戦でも相手の背後への動きを実践してチャンスを作れていたことを意識して「背後へのランニングは引き続き重要なポイントになる」とゴールへの道筋を思い描いた。

 試合会場の維新みらいふスタジアムがある山口県山口市は、試合当日8月16日の昼には体温超えの36.5℃を記録するほどの暑さだった。試合時間もまた暑さが残る過酷な環境で、森山監督はコンディションを考えて前節から先発メンバーを4人変更。3試合ぶりに先発した髙田椋汰をはじめ、石井隼太、荒木駿太、宮崎鴻を先発起用した。
 立ち上がりは厳しい展開となった。高い位置から積極的にプレッシャーをかける仙台だったが、相手の攻撃がスピードアップしたときにはなかなかボールを途中で刈り取れない。相手ゴール前までボールを運び、クロスまでは持っていった。だが、それを跳ね返されたところから一気にカウンターをしかけられ、途中で止められないうちに自分たちのゴールまで持っていかれCKへ。16分の相手CKからのミドルシュートは林彰洋が防いだが、18分のCKでは、自陣左サイドからクリアしようとしたボールを奪われ、守りが薄くなった同サイドから決められてしまった。
 前節に続き前半に先制されてしまった仙台だが、1点を失った後に攻撃で前に出るようになり、チャンスが増える。21分に鎌田大夢から右へ展開。これを受け髙田が打ったミドルシュートは、右に外れた。23分に左サイドから相良竜之介が切れこんだチャンスはブロックされた。しかし攻め続けた25分、左CKからゴールを奪う。鎌田のキックは一度弾かれたが、再びこれを拾った鎌田がファーサイドにクロス。マテウス・モラエスが折り返すと、ゴール前で荒木が頭で押しこんだ。
 仙台は前半のうちに先制される悪い流れを、8分間で止めて1-1にして、ハーフタイムを迎えた。

 後半開始時に優勢になったのは仙台だった。前半の流れを引き継ぎ、47分に早速宮崎が右サイドからDFをかわしてシュート。しかしこれはGKニック・マルスマンに止められた。時折山口のカウンターにさらされる場面はあったものの、仙台は宮崎へのロングボールもあれば、後ろからの組み立てで相手陣内へ前進する場面もあり、あとはシュートを決めるだけのところまで持っていった。
 この流れがゴールに結実したのが63分のことだった。62分に仙台は武田英寿と郷家友太を投入し、さらに攻撃の圧力を強める。すると、自陣左サイドでカットしたボールを足下のパスで確実につなぎ、センターサークル付近から武田がボールを運ぶ。ここで前線の選手たちが、しっかり武田のパスを呼びこむ動き出しをして相手のディフェンスラインを牽制。そして、左サイドから相手の乱れたディフェンスラインに割って入ったのが、相良だった。この動きをボール保持者の武田は見逃さず、山なりのスルーパスを通す。「練習から常に相良と常にやっているかたち。走ったら常に出すように意識しています」という武田の狙いどおりのパスが相良に通り、GKと一対一に。ここで相良は冷静に右足のワンタッチでボールを浮かし、逆転ゴールを決めた。
 「ヒデ君(武田)にあそこに入る瞬間に斜めに走ることは決めていました。そこでいいボールを出してくれたので、感謝しています」という相良は、第3節・大分戦以来の今シーズン2点目。チームとして狙っていた、背後への動きが実ったゴールでもあった。
 このまま逃げ切りたいところだったが、2-1としてから山口が攻撃の圧力をかけてきたことに対して、仙台は受けに回る時間が増えた。激しくプレッシャーをかけてきたぶん、この日の山口の暑さも加わって消耗が選手たちにのしかかってきた。さらに、ボールを動かすうえで中心になっていた鎌田も倒れて交代。アクシデントもあって代わった選手の入るポジションも定まりにくい格好になった。
 疲労で前からのプレッシャーをかけにくくなってきたぶん、仙台は押しこまれるようになる。クリアボールがなかなかカウンターに繋がらないもどかしさもあった。なんとか持ち前の守備で耐え抜ければよかったが、この日は続かず。81分、右サイドを抜かれ、上げられたクロスをはじき返せず、折り返しを押しこまれてしまった。
 2-2とされてからも、仙台の苦しい時間は続く。後半アディショナルタイムに途中出場の名願斗哉が相手陣内左サイド深くでFKを獲得したが、これは相手の守りを崩せず。90+7分には、CKの流れから武田のクロスにマテウス・モラエスが頭を合わせたが、シュートは右に外れた。逆に90+8分、相手のミドルシュートを受けたが、これは林彰洋のファインセーブで食い止めた。長いアディショナルタイムの間にも勝ち越し点は生まれず、2-2で試合は終わった。

 仙台にとっては、森山監督も「勝点2を失ってしまった」と嘆いたように痛恨の結果であることは間違いない。相手の順位どうこうよりも、一時逆転して2-1でリードした試合を締めくくる戦い方ができなかった。髙田は自身が失点に関わったことを反省したことに加え、「逆転した後の試合の運び方を、もう一回チームで考えないと」と神妙な面持ちで口にした。ベンチからの指示や選手交代で解決できる部分もあるが、けがなどのアクシデントによる要因で交代することもあるため、ピッチ上にいる選手たちが臨機応変に戦う術も身につけなければならない。選手の組み合わせが変わる中でも、徹底して守るとき、カウンターに切り替えられるときなど、状況を見て対応する力の必要性が課題となった。
 一方で、第19節・山形戦以来の複数得点ができたことは大きな収穫。無得点が続くと焦りがシュートミスを生む悪循環に陥りうるが、練習で長く鍛えている、背後への動きやそれに対応したパスなどの連係によってゴールすることができた。得点した相良は「点を決められてしまったけれどもすぐに追いつけたことは、チームとして成長できているところ。どんなかたちであれ点を取りたかったので、あのかたちで点を取れたことで自信になりますし、ここから乗っていけると思います」と前を向いた。
 5試合連続勝利なしと、苦しい状況は続いている。しかも次節は上位で好調の千葉が相手。仙台にとって試練は続く。だが森山監督によれば「崩れていくのは一瞬なので、もう本当に、選手同士もそういう話をしていましたし、次の一戦に向けて準備するしかないので、もう本当に死に物狂いで次の千葉戦に、戦う気持ちを持って臨みたい」と心構えを示す。仙台は下ではなく前を向き、この日の悔しさも力に変え、次節こそ勝利を手にしたい。

(by 板垣晴朗)