【スペシャルインタビュー】GK 33 林彰洋選手 クラブハウスはチームが強くなるために、大事にしなければいけない場所(みんなで描くベガルタの未来 〜EVER GOLD SPIRIT〜 第2弾)

 現在、ベガルタ仙台ではクラブがさらに大きく、強く、たくましくなるためのクラウドファンディング第2弾「みんなで描くベガルタの未来~EVER GOLD SPIRIT~」ALTAIR(アルタイル)を実施中です。

 ファン・サポーターのみなさまと作り上げている天然芝グラウンドに隣接する「新しいクラブハウス建設」を主な目的とし、日ごろからクラブを支えてくれるみなさまへ向けたさまざまなリターンをご用意しています。第2弾もすでに多くの方々にご支援をいただき、10月12日には支援金額が10,000,000円に到達しました。

 現在建設中の新クラブハウスは監督、スタッフ、選手が練習の準備を行ったり、試合へ向かっていくために長い時間を過ごす大切な場です。その中ではどのようなことが行われているのか。選手にとってはどのような場所なのか。さまざまなクラブのクラブハウスを知っているGK林彰洋選手に「クラブハウス」への思いやそこでの過ごし方についてインタビューしました。

「僕がここで過ごす時間は長い」自分の体と向き合い、けがのリスクを減らす

——林選手のクラブハウスでの一日を教えてください。午前10時トレーニング開始の日はどのようなスケジュールですか?
「だいたい8時くらいに来て、最初に体を温めるためにお風呂に入ります。その後、トレーナーと一緒に、体がどういう状態なのかチェックを行います。硬いところがあればほぐしてもらって、そこまでで8時40分くらい。そこから残り1時間20分くらいで、ストレッチをしたり、体幹トレーニングを行うなど体作りをします。体の状態を把握する時間を過ごして、残り30分にはテーピングを行って、現場に向かうような形です。」

——約2時間のトレーニングを終えて、クラブハウスに戻ってからはどのように過ごしますか?
「シャワーを浴びて、早めに昼食をとります。その後は、主にストレッチをし、筋トレを行います。その後に、アフターケアとしてトレーナーの方に体を見てもらってケアしてもらいます。その日のトレーニングで痛めてしまったところがあれば、ケアが中心という時間を過ごすこともあります。今日はセルフケアで大丈夫だなという時もあります」

——全体トレーニング後も、クラブハウスで過ごす時間は長いですね。
「そうですね。人によるとは思いますが、僕の場合はクラブハウスで過ごす時間が長い方だと思います」

——試合当日はクラブハウスでどのような時間を過ごしていますか?
「僕はちょっと特殊なんです。試合3時間半前に軽食が入るんですが、5時間前には来ています。トレーナーと一緒にストレッチをして、ある程度体を作る時間を取ります。遠征先ではホテルの部屋でそういう準備をしてから、3時間半前の軽食に臨んでいます。3時間半前というのが消化に適する時間と言われていて、そこで消化に良いものを摂っています。そこで食べる量も個人差はあります。それぞれ準備するのに必要なことがあればここで準備をして、ミーティングまでリラックスして過ごしています」

——林選手は「特殊」とおっしゃっていますが、長い時間を過ごしているんですね。
「そうですね。僕は自分の型を持っていて、何でもいいやというタイプではないんです。けがをしたこともありましたし、体に対して自分自身がどれだけ真摯に取り組めるかということを大事になるのかなとこの年になって感じます。結局、自分自身に気を遣うことができるのは自分だと思うので、自分の体は自分が守る。時間をかけてじっくりと自分の体を見ることができる状況の方が、けがのリスクを減らせるのかなと思っています。そういうことを考えて、長い時間を割くようにしています」

クラブハウス、そこはクラブのエンブレムを掲げる大切な場所

——林選手はベガルタ仙台に来る前にも国内外のクラブで豊かな経験を積んでこられました。それぞれのクラブでのクラブハウスの違いは感じましたか?
「海外の場合は、本当にチームによるんですが、めちゃくちゃ大きいクラブもありますね。『これが全このクラブの敷地なの?』と驚くようなところもあります。選手の衣食住も、その敷地内で調ってしまうという状況もあったりします。寮の施設があったり、そうでなくても仮眠部屋があったりします。食事をするレストランがあり、休める場所があり、泊まれる施設もあります。リラックススペースが充実しているクラブもあったり。上のチームになればなるほど、いろいろな施設があります。例えば、ビリヤード台があったり、みんなで戯れることができるような場所もあります。チームの規模や選手のリクエストによって、さまざまな設備があります」

——林選手にとってクラブハウスとはどのような場所ですか?
「クラブハウスという概念で言えば、選手たちが集まる場。そして、そこでコンディションの維持が行われるので、僕にとってはないがしろにできない場所なんです。チームとしてもミーティングを行ったり、一人一人が多くの時間を過ごす場所なので、どうでも良い場所ではないです。この場所が整うことで、選手の士気も絶対に上がります。そこをないがしろにしていて、強くなるチームはないと思います。クラブのエンブレムを飾る場所でもありますし、チームとして大事にしなければいけない場所です」

——クラブハウスの施設に関して、驚いたエピソードはありますか?
「監督やチームの意向によって設備が変わるということもあると思います。所属したクラブではありませんが、『プールが必要だ』と言ったら、クラブハウスにプールができたとか。影響力のある人の発言は大きいものがあるんだな。クラブハウスにも影響するんだなと感じました。『お風呂の温度がぬるいな』と言ったら、次は熱々になっていたとか。クラブハウスで飲めるコーヒーが、良い豆になりおいしくなっていたとか。影響力がある人はそういうところまで変えてしまうのか!と(笑)」

サポーターにとっても居心地の良い場所に。一緒に作り出す「本番のような練習の緊張感」

——林選手の一声で、新しいクラブハウスに驚きの設備が加わるかもしれませんよ。
「いやいや!このクラブハウスに関しては、スタッフ、選手だけでなく、練習を見に来るサポーターの方にとっても充実している状況を作って欲しいと僕は思っています。特に、サポーターのみなさんが、練習公開の時に気持ちよく見ることができて、応援しやすい、選手と親しみやすい場所であって欲しいと思っているんです。僕らのクラブハウス内がどうなっているか、どう過ごしているかということは、外からはなかなかわからないですが、練習の風景を見られるのは、ああいう場だけだと思うので。チームの空気感を、試合とは違う環境で間近で感じるという機会はとても良いと思うんです。見やすい、触れ合いやすいという環境にして欲しいですね」

——今年、森山佳郎監督がファンサービスに力を入れていますが、練習を公開して、ファンサービスで選手と触れ合うサポーターのみなさんは本当にうれしそうなんですよ。
「やっぱり僕らも触れ合える喜びや、練習を見てもらえる緊張感があります。見てもらえている方が、雰囲気もピリッとなりますし、その緊張感の中でどういうプレーができるの?ということですよね。緊張感なしで、プレッシャーもかかっていない状況でやれているプレーと、公式戦で本当に勝たなければいけないという試合、同じ状況でプレーができる?という話なんです。緊張感があれば、『ミスをしてはダメだ』となる。多くのサポーターがいる中で、できるプレーとできないプレーがあると思いますが、そういう緊張感は作り出そうとしても、狙って作り出せるものはないと思うので、“本番”に近い状況をサポーターのみなさんにも作ってもらいながら良い練習ができたら良いと思います」

二部練習の間の休息も快適な環境へ。何気ない会話から選手同士の理解も深まる

——外ではサポーターのみなさんが集いやすい環境を作りたい。そして、クラブハウス施設内について、選手から何か要望は出していますか?
「今年は特に二部練習が多かったので、その中休みのレスト(休憩)は本当に大切なんです。そのレストのタイミングに、今のクラブハウスでは休む場が少ないんです。それは休憩場所が限定されて、上手く休めないと午後のトレーニングのクオリティーが下がってしまうということがあります。短期間でどれだけ休めるかということが大事だし、休息ができるかどうかで次の練習に100%に近い状況で臨めるかどうかが変わる。そういう意味ではクラブハウスでの居方、過ごし方は大事になると思います」

——今、二部練習の間、選手のみなさんはどうしているんでしょうか?
「人によりますが、僕はスパメッツァ仙台 竜泉寺の湯へ行きます。午後が筋力トレーニングの時はそこで交代浴をして、リフレッシュしています。午後がサッカーのトレーニングとなる時は、あまり体を緩め過ぎても良くない。とはいっても、今のクラブハウスはステイできる場所があまりないので、車にいたりします。今の環境で二部練習を続けていくのは過酷かなと思いますが、チームの方針として年間を通して強くなりたいということを考えていくと、練習量を減らすことは本望ではない。休息をしっかり取って、最高の状況で練習に臨みながら強くなっていく。それが理想なのかなと思います」

——新しいクラブハウスに休息の場は作れそうですか?
林選手「クラブハウスは広くなるんですよね?」
広報スタッフ「クラブハウスは全体的に広くなります。設備がないというよりも、広さがないということが課題だったので、改善されます」

——選手がゆったりと休息を取ったり、集まる場としてもクラブハウスは大事ですね。
「はい。そうだと思います。みんなが、なんとなく『あの場面で、もっとあれできたよね』というサッカー的な話も大切ですし、普通の会話の中で、『あっ、こいつはこういう性格なんだ』と知ることができるだけでも、プレーへの一つの気づきになるんです。『こいつの性格なら、こっちかもな』『こっちに(パスを)出して欲しいだろうな』とか、そういう感覚になるんです。そういうところは、対戦相手にはわからない部分。僕らが強みにできる部分だと思うんです。そういうコミュニケーションは大事になります」

——互いをよく知る、それは大事なことです。他にクラブハウスで行われている意外なことはどんなことですか?
「そうですね……。圧倒的に特殊なことは、そこまでないかもしれません。やっぱりクラブハウスを離れても選手同士で夕飯を食べたりしますが、それを決めるのはクラブハウスなんですよね。ずっと、ここにいるので。『今日一緒に夜飯食べよう』というような会話や、『今度のオフ、何するの?』というようなやり取り。そういう話をする場はここなんですよ」

——選手のみなさんは日中もずっと一緒にいるけれど、クラブハウスを離れても一緒にいたりしますね。
「僕らはほとんどが地元を離れて、仙台でプレーをしています。生まれた場所、育った場所ではなかったりする。そうなった時に、サッカー以外での知り合いも少なかったりするので、自然と選手同士の付き合いやクラブハウスでの会話が増えます」

——移籍してきたばかりで、家族と離れていたら孤独になりますよね。
「そうですね。そういう時はある程度周りの選手も『一緒に行こうよ』という話をしたりします。知らなければ何でも教えるし、そういうやり取りは多くありますよ」

——ここで過ごす時間、築かれた良い関係が、サッカーにも良い影響を与えていきますか?
「もちろん!でも、全ての選手の仲が良ければいいというわけでもないです。人間関係ですから、性格が合う合わないもあると思う。でもサッカーのプロの世界では、性格が合わなかったとしても、試合で結果を残せればよい。全員が、仲良しでやれればいい訳ではないです。ただ、サッカーをする上でコミュニケーションを取ったり、性格を知るという作業は大事だと思っています。共有の意識を持つことや、チームが打ち出した『こういうサッカーをやりたい』という方針に対して、僕らがどうアンサーを出せるか。それもクラブハウスを介して話すことが多いです。そういう意味では、家に近い。セカンドハウスに近いという立ち位置が、クラブハウスなのかなと思います」

——林選手がクラブハウスのなかで一番好きな施設や、気に入っている時間は?
「プロ選手において、一番の敵、最後までついてくる厄介な相手は、けがだと思うんです。トレーナーがいつも親身になって僕の話を聞いてくれます。トレーナールームが僕にとっての憩いの場なのかなと思います。とはいえ、全て任せてしまえば良いということでもなくて、セルフでケアをしながら、できないところは相談してみたり。選手が最も大事にしなければいけない体という部分で、筋トレルームやトレーナールームが大事な場と思っています。クラブハウスで一番好きな場所ですね。人間関係を築く上でも一番大事な場所です。トレーナーも人、それぞれの性格があります。その施設を介して信頼関係を築きながら、僕らの体を託していきます。例えばクラブハウスがなければ、グラウンドからの帰り道のちょっとした会話だけでコミュニケーションを成立させるのは難しいです。クラブハウスがあって、留まる場所がある。そこで改めて『どうなの?』という話ができるからこそ、けがのリスクを下げたり、大事になる前に回避できたりということにつながっています。それはクラブハウスがあってこそなのかな。クラブハウスがあることが当たり前ではないですからね。J1はありますし、J2でも最近はほとんどのクラブが持っていますが、秋田では最近新しい施設ができました。そういうことを考えると当たり前ではないですよね。クラブハウスがあることによって、選手やスタッフの信頼関係はより深まっていくのかなと思います」

 これまでさまざまなクラブで経験を積んできた林選手。自分自身の体と向き合う場、選手同士やトレーナーさんなどスタッフとの大切なコミュニケーションの場としてクラブハウスがあることを教えてくれました。練習を見に来てくれるサポーターのみなさんへの思いも強く感じました。長い時間を過ごす第2の家だからこそ、チームが強くなっていくために誰にとっても快適な納得の設備となることを願っています。


ベガルタ仙台は、クラブがさらに大きく、強く、たくましくなるためのクラウドファンディング第2弾「みんなで描くベガルタの未来~EVER GOLD SPIRIT~」ALTAIR(アルタイル)を10月4日より開始いたしました。
ファン・サポーターのみなさまと作り上げている天然芝グラウンドに隣接する新しいクラブハウス建設を主たる目的とし、日頃からクラブを支えてくれるみなさまへ向けた様々なリターンをご用意しています。
今回、クラブコーディネーターである梁C.Dに賛同いただき、引退試合に関するリターンもご用意いたしました。
みなさまのご支援、心よりお待ちしております。
クラウドファンディング第2弾「みんなで描くベガルタの未来~EVER GOLD SPIRIT~」ALTAIR(アルタイル)

取材日:2024年10月11日

(by 村林いづみ)