【スペシャルインタビュー】ベガルタ仙台強化部 担当部長スカウト 平瀬智行さん クラブハウスは、クラブの顔。居心地の良いクラブハウスがチームを強くし、未来を育んでいく(みんなで描くベガルタの未来 〜EVER GOLD SPIRIT〜 第2弾)

 現在、ベガルタ仙台ではクラブがさらに大きく、強く、たくましくなるためのクラウドファンディング第2弾「みんなで描くベガルタの未来~EVER GOLD SPIRIT~」ALTAIR(アルタイル)を実施中です。ファン・サポーターのみなさまと作り上げている天然芝グラウンドに隣接する「新しいクラブハウス建設」を主な目的とし、日ごろからクラブを支えてくれるみなさまへ向けたさまざまなリターンをご用意しています。

 現在建設中の新クラブハウスが果たす役割とは?クラブのOBで現在は強化部で活躍する平瀬智行さんにお話を伺いました。現役時代は鹿島アントラーズや横浜F・マリノスなどビッグクラブでプレー経験を持つ平瀬さん。選手としての経験に加えて、「強化部にとってのクラブハウス」という目線でもさまざまな意見を聞かせていただきました。

広いロッカールームは実力でつかみ取った鹿島アントラーズ時代

——チームのOBであり、現在は「ベガルタ仙台強化部 担当部長 スカウト」の肩書を持つ平瀬さん。改めて、現在の仕事内容について教えてください。
「『強化部見習い』ですね。強化部は4年くらいになります。一つひとつ勉強しながら仕事をしています。強化というのは、本当に難しい仕事です。選手のバランスを取ることや選手とのコミュニケーションも大事です。今、僕は基本的に高校・大学のスカウトをメインとして取り組んでいるのですが、『選手を見る目を持つ』というのは、非常に難しいと思っています」

——スカウトする上で、選手のどういうところを見てターゲットを定めるのでしょうか?
「何を見ているか……。何かギラギラしたところがあったり、一つ何か秀でたものを持っているとか。はっきり言ってしまうと、『自分の好み』にもなってしまうんですが(笑)庄子(春男)ゼネラルマネージャーや、北野さん(大介、強化統括部長)、同じく強化部の車健人とも常に情報を共有しています。そして選手を練習参加させて、決めていくという形になります。本当に難しいんですよ。だからこそ一番大事にしているのはファーストインプレッション。選手を見た時に、『あ、いいな』と思ったら追いかけていくという感じです。」

——「好みの選手」を選ぶとなると、平瀬さんご自身と似たタイプになりますか?
「自分とは違う選手を求めますね。あとはゴリさん(森山佳郎監督)が欲している選手ということを頭に入れながら探しています」

——強化の話もまだまだ伺いたいところですが、今日の話題は「クラブハウス」についてです。現役時代、平瀬さんはさまざまなビッグクラブでのプレー経験がありますね。プロとして一歩を踏み出した鹿島アントラーズではどのような思い出がありますか?
「僕らがいた時(1996年~2004年)のアントラーズは、それほど立派なクラブハウスではなかったですよ。お風呂は浴槽がなく、シャワーだけでした。しかし、ロッカールームは、選手個人のスペースが木枠で区切られていて幅もある。一人ひとつロッカーがありました。そのころの鹿島では『試合に出ている選手』『出ていない選手』でロッカールームが違うんです。隣にはあるんですが、常時試合に出ている選手のロッカーは広い。高卒で、まだ試合に出ていない選手たちは、その隣の部屋です。ベンチシートのような椅子、壁にフックがあってそこに洋服を掛けます。シャワールームも3つ位しかなかったかな。別々なんです」

——今は何でも平等にしなければという考えの方が多いかもしれませんが……。
「そのころは違います。だから本当に早く試合に出ないといけない。立派なロッカーを使えないんです。早く上がらなければという、モチベーションにもなりましたね。そうした競争があるのも良いとは思いますけどね。当時は練習時間も別でした。ブラジルでのプレーを挟んで、鹿島に戻って試合に出られるようになりました。幸運にも、良い方のロッカールームを使えるようになりましたね。その時は『やっと来たか』という感じでニヤニヤが止まりませんでした」

——本当にうれしかったんですね。
「はい。そして鹿島の施設で何が良かったかというと、選手のロッカールームなどは特別なものではなかったですが、フロントスタッフも同じクラブハウスで仕事をしているんです。グッズショップも敷地内にありました。会社の方々とのコミュニケーションも取れていましたね。チケットが欲しいという時は、チケット担当のスタッフのところへ自分で行く。そういうコミュニケーションができるところですし、社員の人たちも当たり前のように練習を見られる環境でした。そういう点はとても良かったです。鹿島には『アントラーズファミリー』という言葉もあるように、クラブハウスはいろいろな人と密接に関われる場所でした。」

——1998年には1年間ブラジルでプレーしていますね。
「ジーコのチームだったので、他のクラブと比べたら良かったです。グラウンドも3面あり、ビーチサッカーができるような場所もある。選手たちが使っているクラブハウスはプレハブ的なものでしたが、シャワーもあるし、きれいな環境でした」

——2002年は横浜F・マリノスへ期限付き移籍しています。
「そのころのマリノスの練習場は東戸塚にありました。元々、横浜フリューゲルスが使用していたクラブハウスを僕たちが使っていたんだと思います。そこは広かったかな。筋トレルームも広く、練習場も目の前で便利だった印象です」

——クラブハウスの広さは重要ですか?
「広さは大事だと思います。選手の居場所ですから、リラックスしたい場所でもあります。ケアを受ける部屋も広い方が落ち着きますね」

——現状の仙台のクラブハウスはちょっと狭いですか?
「そうですね。練習生が来るとロッカーが足りなくなるんです。今のロッカールームはロッカーで塞がれている窓もあるので、やっぱり明るい方がいいですね」

——もう1チーム、平瀬さんはヴィッセル神戸にも所属しました。
「僕が行った当時はプレハブのような設備でした。僕が入った1年目あたりからクラブハウスを作り始めていて、翌年完成し、移転したという形でした。おしゃれなクラブハウスでくつろげる雰囲気がありました。アントラーズよりは狭かったですが、個人個人の木枠で作られたロッカーがありました。浴槽、シャワーに、筋トレルームも広かったかな」

「新しいクラブハウス」と「おいしいご飯」はクラブを強化する大きな武器

——選手時代の平瀬さんにとって、クラブハウスとはどのような場でしたか?
「僕はクラブハウスに来て、練習が終わったらサッと帰る方でしたね。マッサージを受ける時などは、リラックスをしたいと思っていたので、清潔感があって広い空間はいいと思っていました。メンタル的にも落ち着きますよね。新しいクラブハウスは広くなりますよね。居心地の良いクラブハウスになると思います」

——強化部のスカウトという立場でのクラブハウスとなると、見方が変わりますか?
「やはり広い方がいいです(笑)強化部の部屋でも、もう少しスペースがあれば仕事がはかどるかな。クラブハウスでは、選手の動画を見ています。今の時期は、来シーズンどんな選手が良いか、動画を見たりしています。いろいろな情報が入って来るので、見極めながら『この選手は高い。無理だな』とか(笑)」

——目を酷使していますね。
「視力がかなり落ちましたよ。ブルーライトカットの眼鏡をしていますが、目は悪くなりました。クラブハウスではそういう仕事をし、外では直接選手を見に行きます。いろいろな選手に会えるのは面白いですね。」

——映像だけではわからないこともありますからね。
「面白いですよ。安野匠(帝京長岡高校・2024シーズン加入内定)を獲得した経緯も、元々は別の試合を見に行ったんです。そうしたら『おぉ!?あいつは面白いな!』というところから調査が始まった選手なんです。見る予定以外にも良い選手がいたりするので、そういうところは非常に楽しみです」

——選手時代とは全く異なる仕事にやり甲斐を感じていらっしゃいますね。
「はい。そして、連れて来た選手が活躍したらうれしいです。安野や南(創太、日章学園高校・2024シーズン加入内定)、湯谷(杏吏、中央大学・2024シーズン加入内定)たちに、声を大にして言えるのは、『今度クラブハウスが新しく変わるから!』と」

——そこはクラブとしても大きくアピールできることだと。練習参加している選手は現在のクラブハウスも知っていますからね。
「はい、強くアピールできます。そして練習後には、すぐにクラブハウスで(昼食のケータリングを行うレストラン「ら・ふらんす2」の)佐々木泰子さんのご飯が食べられます。彼らは練習参加で食べているのでおいしさを知っている。練習後にクラブハウスでこれだけおいしいご飯を食べられる環境はすごいですよ」

——クラブハウス内で昼食が取れるという今の環境が整ったのは、平瀬さんが現役生活を終えた2010年よりも後でしたからね。
「なかったですよね。佐々木さんのご飯はめっちゃおいしいですから。それも僕たちの武器です。選手たちがみんな『おいしい、おいしい』とお腹いっぱい食べて帰ります」

「あのクラブハウスでプロになる」そこは子どもたちの夢とクラブの未来を育む場所

——スカウト目線だと「新しいクラブハウス、おいしいご飯」は有力な選手を仙台に呼ぶための武器にもなるということですね。
「間違いなく武器になります。クラブハウスはクラブの『顔』ですから。クラブやチームのことを知らない人が、例えば鹿島アントラーズ練習を初めて見に行ってみたとして、まず建物を見て驚くんです。『アントラーズのクラブハウスはすごい。中にはいろいろな施設があって、飲食店もある!グッズも買える。施設も格好良い』と。やっぱりクラブハウスは『顔』なんです。立派なものがあると、高卒、大卒に限らず、次に違うチームからここに来てくれる選手たちに対しても、アピールできる大きな武器になります。クラブハウスやグラウンド、施設のすべてがそうです。良い環境が整っていると『仙台に来て』と言いやすくなります」

——仙台の良い環境を選んで、優れた選手が来てくれるかもしれない、ということですね。
「はい。だからこそ、クラブハウスが新しくなるということは、クラブに携わっている人間としては非常にありがたいですし、多くのサポーターやスポンサーの方々が協力してくださることにも本当に感謝しています」

——今在籍している選手、来年戦ってくれる選手に加えて、もっと先のチームの未来にもつながるプロジェクトなんですね。
「本当にそうですね。将来プロを目指してがんばっているベガルタ仙台のジュニア、ジュニアユース、ユースの選手たちが『あのクラブハウスへ行きたい』『あのグラウンドで練習したい』という夢ができればとても良いことです。それが将来の目標になればいいです。クラブハウスにはそういう役割もあるんです。居心地や設備の充実もそうですが、『クラブの顔』であるという意味は忘れてはいけないです。だからこそ、多くの方々の協力があるということも本当にありがたいことです」

——そこで仕事をする監督、選手、スタッフにとって、練習を見に来るサポーターにとって。いろいろな立場の人にとってうれしいクラブハウスになっていって欲しいですね。
「それはもうプラスにしかならないと思うんです。今、クラウドファンディングという形で多くの方にご協力いただいています。将来的に、これもお金のかかることではありますが、個人的には練習場のスタンドに屋根を作ったらいいんじゃないかと思うんです。雨が降るし、夏は暑い。その中で練習を見学してくれているんです。そこに子どもたちを連れてくるとなった時に、屋根があれば雨を避け、日差しも避けられる。クラブハウスの中の充実も必要ですが、見に来てくれる方々、出資してくれた方々にとって、練習を見やすい環境を整えるということもひとつ大切なことじゃないかと思います」

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 クラブハウスの一角でインタビューを行っていると、練習を終えた森山監督が戻ってきました。新クラブハウスについて、「大きく立派な監督室はいかがですか?」と聞いてみると、「いやー!僕はスタッフみんなと、ずっとしゃべっていたいです。一人では孤独で死んでしまう(笑)監督は孤独な仕事なんですよ。監督室はなくていい。みんなと一緒が良いなぁ」とゴリさんらしい答えが返ってきました。「多くの方にご支援いただいて、本当にありがとうございます」と感謝の思いでいっぱいのようでした。

 「クラブハウスが新しくなる」という強化部・平瀬さんの口説き文句はさすがです。今プレーしている選手にとって快適なだけではなく、新しくチームの一員となる選手や未来を育む場としての新クラブハウスへ大きな希望を感じました。「クラブの顔」が、誰にとっても誇れる自慢の場所となりますように。そこから生まれるたくさんの物語を取材できる日が今から待ち遠しいです。


ベガルタ仙台は、クラブがさらに大きく、強く、たくましくなるためのクラウドファンディング第2弾「みんなで描くベガルタの未来~EVER GOLD SPIRIT~」ALTAIR(アルタイル)を10月4日より開始いたしました。
ファン・サポーターのみなさまと作り上げている天然芝グラウンドに隣接する新しいクラブハウス建設を主たる目的とし、日頃からクラブを支えてくれるみなさまへ向けた様々なリターンをご用意しています。
今回、クラブコーディネーターである梁C.Dに賛同いただき、引退試合に関するリターンもご用意いたしました。
みなさまのご支援、心よりお待ちしております。
クラウドファンディング第2弾「みんなで描くベガルタの未来~EVER GOLD SPIRIT~」ALTAIR(アルタイル)

取材日:2024年10月17日

(by 村林いづみ)