【マイナビベガルタ仙台レディース】2021シーズン、WEリーグ参戦決定。マイナビへとつながれるバトン

サッカー少女たちの憧れの存在に。日本初の女子プロサッカーリーグ誕生へ。日本の女子サッカーが新しい時代を迎える。2021年秋に開幕する「WEリーグ」は10月15日、11クラブの参入決定を発表した。その初めに名前を紹介されたのが「マイナビ仙台レディース」だ。

 東日本大震災の影響で休部した東京電力女子サッカー部マリーゼから選手たちを引き受け、2012年に発足したベガルタ仙台レディース。2017年からタイトルパートナーに株式会社マイナビを迎え、「マイナビベガルタ仙台レディース」として手を携え歩んできた。

ベガルタ仙台の菊池秀逸社長は9月1日のオンライン会見で「クラブ経営が厳しい中でも(レディースの)プロ化の歩みを止められない」と話した。一方でマイナビの中川信行社長は「地域の活性化に寄与するという基本的な考えを引き継ぎ、愛されるチームを目指す」とのコメントをしていた。選手たちが安心してサッカーに集中できる場を残すため、ベガルタからマイナビへバトンが渡された。

 WEリーグ参入の知らせを受け、マイナビベガルタのキャプテンで現在もプロ契約選手のMF隅田凜選手は「素直に嬉しい気持ちと新たに加わるチームとの対戦が楽しみ。チーム全員がプロとなると、周囲の見方も求められるレベルも上がる。チーム全体で切磋琢磨しながらレベルアップしていきたい。これからサッカーを始める少女たち、今頑張っている女性たちの憧れの存在になりたい」と引き締まった表情を見せた。

 現在、株式会社マイナビに勤務しながらプレーしているFW浜田遥選手は「たくさんの人が参入のために私たちの見えないところで力を尽くしてくれた。そして自分たちがサッカーをできる場を残してくれたことに感謝の気持ちでいっぱい。ベガルタから離れてしまうのは寂しいことだけれど、マイナビがチームを残してくれるというのは当たり前のことではない。WEリーグ発表を聞いて、私たちは恵まれていると感じた」と感謝を述べた。

WEリーグの初代代表理事である岡島喜久子チェアは、精力的にリーグに参入が決定した11チームの視察を行っている。10月24日には仙台を訪れ、マイナビ仙台レディースのホームスタジアムとなる予定のユアテックスタジアム仙台、そしてマイナビベガルタ仙台泉パークタウンサッカー場を訪れた。

 スタッフの案内でユアスタを視察した岡島チェアは場内の施設を見学。ピッチレベルに立ち、実際に手で触れて芝の状態を確認した。「本当に芝が素晴らしい。私たちがサッカーをしていた頃は土のグラウンドしかなかった。今でも太ももにはスライディングの痕が残っているくらい。この環境でプレーできる選手たちがうらやましいし、ここを女子で満員にしたい」と仙台が誇るサッカー専用スタジアムを高く評価した。

 その後、選手たちの激励に向かった岡島チェア。練習場ではマイナビベガルタ仙台レディースの選手と共に、レディースジュニアユースの選手たちも「ようこそ、岡島チェア」とプラカードを掲げて出迎えた。これには岡島チェアもにっこり笑顔、スマートフォンを取り出し記念撮影をしていた。

 選手との対話も大事にしていく。早稲田大学卒業の岡島チェアは後輩にあたるDF奥川千沙選手を指名し、「プロ化にあたって私たちはどうふるまっていったらよいか」との質問に答えた。「皆さんにはこれからプロとして自覚を持って欲しい。リーグとしても研修などでSNSでの発信を勉強するということも考えている。そしてWEリーグの理念である女性活躍社会の推進の活動に参加して欲しい」と呼びかけた。11チームで試合を行っていくため、毎節1チームが試合を行うことができない。その日はただのオフではなく、WEリーグの理念に基づいた活動日として、これからクラブや選手たちと話し合いながら具体的な内容を決定していくつもりだ。

 WEリーグが開幕する2021年は、東日本大震災発生から10年目の年でもある。マリーゼから歴史をつないだ選手たちは、これまで「復興の象徴」として元気にサッカーを続け、勝つ姿を見せることでその役割を担ってきた。岡島チェアはそうした経緯も踏まえ「マリーゼの意志も引き継いでいって欲しいと思う。2011年女子ワールドカップで日本が優勝した。日本全体に勇気を与える、明るいニュースとなった。スポーツにはそういう力がある。これからも震災を忘れないで、経験を生かして気持ちを発信して欲しい」と期待を込めた。

プロ化への歩みは着々と進んでいる。来年の開幕に向けてクラブの運営方針と共に新たな「チームカラー」も発表された。

 株式会社マイナビは「マイナビ仙台レディース」のWEリーグ参入が決定に関するオンライン記者会見を10月27日に実施した。マイナビの中川信行 代表取締役社長は、「チーム全員を原則プロ化とする」「仙台を本拠地にする」という二つのチーム運営方針を発表した。より選手たちが集中してサッカーに打ち込める環境づくり、またユース、ジュニアユースといった育成年代の運営も引き継いでいく。

 チームカラーについて中川社長は「当社のコーポレートカラーでもある『マイナビブルー』(水色)を予定している。しかし仙台のファンの皆さんにもご納得いただけるように、どこかにベガルタ仙台レディースの味が残るようなユニフォームにできればいいと思う」と明かした。マリーゼ時代を経験している選手たちにとっては、原点回帰の水色となる。そこにどのように「ベガルタゴールド」が配されるのだろうか。マイナビベガルタ仙台レディースのユニフォームには、マリーゼの誇りを忘れぬよう、「水色の星」が縫い付けられている。ベガルタの思いがどのように引き継がれるのか注目したい。

 2020シーズンのリーグ戦もあとわずか。マイナビベガルタにとっては、なでしこリーグで戦うラストイヤーとなる。仲間と力を合わせ、サポーターの応援を受けながら、全力でサッカーを楽しんで欲しい。その先に待っているのは、更なる大きな舞台、WEリーグ。前を向いて、新たな未来に突き進んでいこう。